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ITトレンド

【Step 1詳細版】現状把握の具体的な方法とツール - DX推進の第一歩

2025/10/2
【Step 1詳細版】現状把握の具体的な方法とツール - DX推進の第一歩

前回の記事「なぜ日本企業の93%がDXで成果を出せないのか?確実な業務効率化5ステップ」では、DX成功の5つのステップをご紹介しました。

今回は、その第一歩である「Step 1: 現状把握」について、実際に使えるツールと具体的な方法を詳しく解説します。

なぜ現状把握が最も重要なのか?

「とりあえずシステムを導入しよう」 「あの会社が使っているツールを入れてみよう」

こんな思いつきでDXを始めた企業の多くが失敗しています。

理由は簡単です。現状を正確に把握していないからです。

現状把握なしにDXを始めるのは、地図を持たずに山登りをするようなもの。どこに問題があるのか、どこに向かうべきなのかがわからなければ、どんなに高価なツールを導入しても成果は出ません。

よくある失敗例

高額なシステムを導入したものの、現場からは「使いにくい」「前の方が良かった」という声ばかり。こういった失敗は決して珍しくありません。

なぜこうなるのか?

現状把握が不十分だからです。

  • 担当者が本当に困っていることは何なのか?
  • どの業務に最も時間がかかっているのか?
  • 現場はどんな情報を必要としているのか?

これらを数字で把握せずに、「なんとなく管理が必要そう」という理由だけでシステムを選んでしまうケースが多いのです。

現状把握の4つのステップ

現状把握は、以下の4つのステップで進めます。

  • ステップ1:業務の棚卸しをする
  • ステップ2:時間とコストを測定する
  • ステップ3:問題点とボトルネックを特定する
  • ステップ4:データを分析して優先順位をつける

それぞれ詳しく見ていきましょう。


ステップ1:業務の棚卸しをする

まずは「誰が」「何を」「どのように」やっているのかを洗い出します。

具体的なやり方

1. 部署ごとに業務をリストアップ

まずは紙でもExcelでも構いません。以下の項目を記入していきます。

  • 業務名(例:見積書作成、請求書発行、在庫確認)
  • 担当者
  • 頻度(毎日、週1回、月1回など)
  • 使っているツール(Excel、紙、メール、電話など)
  • 関連部署(誰に確認が必要か、誰に渡すか)

2. 業務フローを図にする

文字だけでは見えにくい「流れ」を可視化します。

[見積依頼受付] → [担当者アサイン] → [原価確認] → [見積書作成] → [上長承認] → [顧客送付]
     ↓                                      ↓
  (3分)                                (30分)

このように、各工程にかかる時間も記入すると、後の分析が楽になります。

おすすめツール:Notion

Notionがおすすめの理由

  • 無料プランでも十分使える
  • 表形式でもリスト形式でも整理できる
  • 部署ごとにページを分けて管理しやすい
  • フローチャートも作成可能
  • チームで共有して情報を更新できる

使い方のコツ

  1. 「業務リスト」データベースを作成
  2. プロパティに「担当者」「頻度」「所要時間」「使用ツール」を追加
  3. ビュー機能で「頻度別」「担当者別」に切り替えて俯瞰

三重県内の企業様でも、Notionを使って業務の可視化を進めるケースが増えています。

おすすめツール:Trello

シンプルに業務フローを管理したい場合はTrelloも有効です。

  • カード形式で視覚的にわかりやすい
  • ドラッグ&ドロップで簡単に並び替え
  • チェックリスト機能で詳細な手順も記録可能

使い方の例

  • リスト名:「受注前」「受注後」「制作中」「納品」
  • カード:各業務を配置
  • チェックリスト:各業務の詳細手順を記載

ステップ2:時間とコストを測定する

業務をリストアップしたら、次は「数字」で現状を把握します。

なぜ数字が必要なのか?

「この作業、時間がかかるんですよね」

このような感覚的な訴えでは、経営陣は動きません。しかし、

「この作業、月に100時間かかっていて、人件費で25万円のコストになっています」

こう数字で示せば、話は変わります。

時間測定の具体的な方法

方法1:Togglで自動計測

Togglは作業時間を簡単に記録できる無料ツールです。

使い方

  1. タスク名を入力(例:「見積書作成」)
  2. スタートボタンを押す
  3. 作業終了時にストップ
  4. 自動で時間が記録される
  5. 週次・月次レポートで集計

メリット

  • ボタン1つで記録開始
  • プロジェクトごとに分類可能
  • レポート機能で分析も簡単
  • スマホアプリもあり外出先でも使える

方法2:Googleスプレッドシートで手動記録

ツール導入が難しい場合は、スプレッドシートでも十分です。

記録項目

  • 日付
  • 業務名
  • 開始時刻
  • 終了時刻
  • 所要時間(自動計算)
  • 備考(中断理由、問題点など)

計算式の例

所要時間 = TEXT(終了時刻 - 開始時刻, "h:mm")

最低でも2週間〜1ヶ月は記録を続けましょう。そうすることで、平均的な業務時間が見えてきます。

コスト計算の方法

時間がわかれば、コスト計算は簡単です。

基本の計算式

業務コスト = 作業時間 × 時給換算した人件費

具体例:見積書作成業務

  • 1件あたり30分
  • 月間100件
  • 担当者の人件費:年収500万円(時給換算 約3,000円)
月間コスト = 30分 × 100件 × 3,000円 = 150,000円
年間コスト = 150,000円 × 12ヶ月 = 1,800,000円

年間180万円ものコストがかかっていることがわかります。

隠れたコストも忘れずに

作業時間だけでなく、以下のような「見えないコスト」も計算しましょう。

1. 待ち時間のコスト

承認待ち、確認待ち、返信待ち…これらの時間も機会損失です。

例:承認待ち平均1日 → 1案件あたり24,000円の機会損失(日給換算)

2. ミスによるコスト

  • やり直し作業の時間
  • 顧客対応の時間
  • 信用低下による売上減少

例:月5件のミス × やり直し1時間 × 時給3,000円 = 月15,000円

3. ツール利用料

現在使っているツールの月額料金も洗い出しましょう。


ステップ3:問題点とボトルネックを特定する

数字が集まったら、次は「どこに問題があるか」を見つけます。

現場ヒアリングの実施

数字だけではわからない「現場の困りごと」を聞き出します。

効果的なヒアリング方法

質問例

  1. 「この業務で一番時間がかかるのはどこですか?」
  2. 「どんなときにミスが起きやすいですか?」
  3. 「もっと効率化できると思う作業はありますか?」
  4. 「他部署とのやり取りで困っていることは?」
  5. 「理想的には、この業務をどう改善したいですか?」

ヒアリングのコツ

  • 1対1で話す(周りに人がいると本音が出にくい)
  • 批判ではなく「改善のため」と伝える
  • 具体的なエピソードを聞く
  • 否定せずに最後まで聞く

三重県内の企業様での現場ヒアリングでは、「実は社内システムが使いにくくて、Excelで別管理している」といった事実が発覚することもあります。

ボトルネックの見つけ方

業務フローの中で「詰まっている場所」を特定します。

チェックポイント

  • ✓ 特定の人に業務が集中していないか?
  • ✓ 承認や確認で長時間待たされていないか?
  • ✓ 手作業で転記している箇所はないか?
  • ✓ 同じ情報を複数回入力していないか?
  • ✓ 紙ベースでやり取りしている業務はないか?

よくあるボトルネックの例

承認待ち

  • 原因:承認者が多忙・不在
  • 影響:業務が進まない

手作業転記

  • 原因:システム間連携なし
  • 影響:時間とミスが増える

属人化

  • 原因:特定の人しかできない
  • 影響:その人が休むと止まる

情報共有不足

  • 原因:連絡手段が統一されていない
  • 影響:確認作業が増える

ステップ4:データを分析して優先順位をつける

ここまで集めたデータを、AIの力も借りて分析します。

NotebookLMを活用した分析

NotebookLMとは?

Googleが提供する無料のAI分析ツールです。収集した資料をアップロードすると、AIが内容を理解して質問に答えてくれます。

DX現状把握での活用方法

1. 収集したデータをアップロード

  • 業務リストのスプレッドシート
  • 時間計測データ
  • ヒアリング結果のメモ
  • 現在の業務フロー図

これらをPDFやテキスト形式でNotebookLMにアップロードします。

2. AIに質問する

アップロード後、以下のような質問をしてみましょう。

「このデータから、最もコストがかかっている業務トップ3を教えてください」

「ボトルネックになっている工程はどこですか?」

「優先的に改善すべき業務を、理由とともに提案してください」

「他部署との連携で問題が起きている箇所を指摘してください」

3. レポートを自動生成

NotebookLMは、アップロードした資料をもとに「分析レポート」や「改善提案」を作成してくれます。

これにより、経営陣や関係者への報告資料作成の時間も大幅に削減できます。

実際の活用イメージ

業務データをNotebookLMで分析することで:

  • 受発注業務にどれだけのコストがかかっているか明確に
  • 電話とメールとFAXが混在していることが非効率の原因と特定
  • 「受発注システムの導入」が最優先課題と判断できる

このような分析結果をもとに、最適なシステムを選定し、業務改善を進めることが可能になります。

Excelでの基本分析

NotebookLMを使わなくても、Excelの基本機能で十分分析できます。

おすすめの分析方法

1. ピボットテーブルで集計

業務別、担当者別、日付別に時間とコストを集計して、全体像を把握します。

2. グラフで可視化

  • 円グラフ:業務別の時間配分
  • 棒グラフ:業務別のコスト比較
  • 折れ線グラフ:月ごとの変化

視覚化することで、問題が一目瞭然になります。

3. パレート分析(80:20の法則)

「全体の80%のコストは、20%の業務が占めている」

この法則に基づいて、コストの大きい順に業務を並べ、上位20%に該当する業務を特定します。

ここを改善すれば、最大の効果が得られます。


現状把握で使えるテンプレート

実際に使える3つのテンプレートをご紹介します。

テンプレート1:業務棚卸しシート

記録する項目

  • 業務名
  • 担当者
  • 頻度
  • 所要時間
  • 使用ツール
  • 問題点
  • 改善アイデア

記入例:見積書作成

  • 業務名:見積書作成
  • 担当者:営業A
  • 頻度:毎日5件
  • 所要時間:30分/件
  • 使用ツール:Excel
  • 問題点:過去データ探しに時間
  • 改善アイデア:テンプレート化

記入例:請求書発行

  • 業務名:請求書発行
  • 担当者:経理B
  • 頻度:月末100件
  • 所要時間:5分/件
  • 使用ツール:会計ソフト
  • 問題点:手入力ミス
  • 改善アイデア:システム連携

テンプレート2:時間・コスト計算シート

記録する項目

  • 業務名
  • 月間発生件数
  • 1件あたり時間
  • 月間総時間
  • 時給換算
  • 月間コスト
  • 年間コスト

計算例:見積書作成

  • 業務名:見積書作成
  • 月間発生件数:100件
  • 1件あたり時間:30分
  • 月間総時間:50時間
  • 時給換算:3,000円
  • 月間コスト:150,000円
  • 年間コスト:1,800,000円

テンプレート3:改善優先度マトリクス

記録する項目

  • 業務名
  • 年間コスト
  • 改善効果(予想)
  • 導入難易度
  • 優先度

評価例:見積書作成

  • 業務名:見積書作成
  • 年間コスト:180万円
  • 改善効果(予想):50%削減
  • 導入難易度:低(テンプレート化)
  • 優先度:★★★ 最優先

評価例:在庫管理

  • 業務名:在庫管理
  • 年間コスト:240万円
  • 改善効果(予想):30%削減
  • 導入難易度:高(システム導入)
  • 優先度:★★ 計画的

優先順位の付け方

効果が大きい × 実現が簡単 = 今すぐやる

  • 例:契約書の電子化

効果が大きい × 実現が難しい = 計画的に進める

  • 例:顧客データの統合

効果が小さい × 実現が簡単 = 余裕があればやる

  • 例:社内チャットツール導入の検討

効果が小さい × 実現が難しい = やらない

  • 例:使用頻度の低い業務のシステム化

現状把握のよくある失敗と対策

失敗1:完璧を目指しすぎる

失敗例 「すべての業務を正確に測定してから…」と考えて、いつまでも次に進めない。

対策 まずは主要業務だけでOK。全体の70%を把握できれば十分です。

失敗2:現場の協力が得られない

失敗例 「時間を測る」と伝えたら「監視されている」と反発された。

対策

  • 「評価のため」ではなく「改善のため」と明確に伝える
  • 現場の負担にならない簡単な記録方法を選ぶ
  • 改善されたら現場が一番楽になることを説明

失敗3:数字だけで判断する

失敗例 数字上は問題なさそうでも、現場は困っている。

対策 数字とヒアリングの両方を組み合わせる。定量データと定性データの両面から判断しましょう。


三重県内の企業様へ:現状把握から始めるDX支援

私たちは三重県津市を拠点に、東海地方の企業様のDX推進をサポートしています。

実際の支援内容

ステップ1:現状診断(無料相談)

  • 業務の可視化支援
  • 現場ヒアリングの実施
  • データ収集方法のアドバイス

ステップ2:分析とレポート作成

  • 収集データの分析
  • 改善優先順位の提案
  • 概算コスト・効果の試算

ステップ3:改善策の提案

  • 最適なツール・システムの選定
  • 導入計画の策定
  • ホームページやWebシステムでの業務効率化提案

「どこから手をつければいいかわからない」 「現状把握のやり方がわからない」 「分析結果をどう読み解けばいいか不安」

そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。


まとめ:現状把握は「地図」を手に入れること

DXの第一歩である「現状把握」について、具体的な方法とツールをご紹介しました。

現状把握の4ステップ

  1. 業務の棚卸しをする → Notion、Trelloで可視化
  2. 時間とコストを測定する → Toggl、スプレッドシートで記録
  3. 問題点とボトルネックを特定する → 現場ヒアリングとデータ分析
  4. データを分析して優先順位をつける → NotebookLM、Excelで分析

重要なポイント

  • 完璧を目指さず、まず70%の把握から始める
  • 数字とヒアリングの両面から分析する
  • NotebookLMなどAIツールを活用して効率化
  • 現場の協力を得るために「改善目的」を明確に伝える

現状把握ができれば、次のステップ「優先順位の決定」がスムーズに進みます。

次回予告

次回は「【Step 2詳細版】優先順位決定の実践的フレームワーク」をお届けします。

  • 改善効果を正確に見積もる方法
  • ROI(投資対効果)の計算方法
  • 経営陣を説得できる提案書の作り方

をご紹介予定です。

まずは今日から、主要業務の時間測定から始めてみませんか?


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三重県内の企業様向けに、業務効率化につながるWebソリューションを提供しています。

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現状把握の結果をもとに、最適なWebシステムをご提案いたします。

まずは無料相談から

お困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

西村 力也

西村 力也

代表取締役

2002年からWeb制作・システム開発に従事。React、Next.js、TypeScriptを中心としたモダンなフロントエンド開発の専門家。AI検索最適化(AIO)の先駆者として、ChatGPT、Perplexity等のAI検索エンジン対応を推進。三重県津市を拠点に、東海地方の企業様のデジタル変革を支援しています。

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